◆漢方薬の副作用

漢方の成分の化学物質によって起こる症状のことを副作用といいます。

ですが、本来の意味での副作用ではない状態もあります。

・誤治

漢方医学的に、あきらかに間違った処方をされてしまい起こる作用。

・瞑眩

漢方薬の服用をはじめたとき、極めてまれですが一時的に症状が悪化したり

予測不能な症状が発現することがあり、その後、急速に症状が好転して治癒傾向に向かう。

これを瞑眩といい、治癒の過程で起こるものと考えられています。

ただ、症状が好転せず続く場合は副作用となります。

瞑眩でみられる症状は、腹痛・嘔気・嘔吐・下痢・発熱・めまい・鼻血・子宮出血などです。

◆生薬の副作用

みなさんの認識に【漢方薬は天然生薬から作られるから副作用がない】と

誤解をしている人が多い印象を受けます。

ですが実際、副作用はあらわれることもあるので適切な対応が必要になります。

ここでは、おもな生薬が惹起する可能性がある副作用を紹介していきます。

■甘草の副作用

偽アルドステロン症

低カリウム血症(なんらかの原因で血清中のカリウム濃度が低下する電解質代謝異常症のひとつ)

血圧上昇・ナトリウム、体液の貯留、浮腫、体重の増加などの症状をきたす。

検査にて測定異常が認められれば投与を即中止する。

ミオパチー:筋肉の疾患の総称

低カリウム血症の結果として、ミオパチーは現れる。

脱力感・四肢麻痺、痙攣の異常が認められば投与は即中止にする。

■麻黄の副作用

自律神経系症状

不眠・発汗過多・頻脈・動悸・全身脱力感・精神興奮

消化器症状

食欲不振・胃への不快感・悪心・嘔吐

泌尿器症状

排尿障害

■附子の副作用

中毒症状

心悸亢進・のぼせ・舌のしびれ・悪心

■地黄の副作用

消化器症状

食欲不振・胃への不快感・下痢

■大黄の副作用

消化器症状

食欲不振、腹痛、下痢

■芒硝(ボウシュウ)の副作用

消化器症状

腹痛・下痢

■山梔子(サンシシ)の副作用

消化器症状

食欲不振・胃への不快感・悪心・嘔吐・下痢

■酸棗仁(サンソウニン)の副作用

消化器症状

食欲不振・腹痛・下痢

■石膏の副作用

消化器症状

食欲不振・胃への不快感、軟便、下痢

■川芎(センキュウ)の副作用

消化器症状

食欲不振・胃への不快感・悪心・嘔吐

■当帰の副作用

消化器症状

食欲不振・胃への不快感・悪心・下痢

■薏苡仁(ヨクイニン)の副作用

消化器症状

胃への不快感・下痢

■桂皮の副作用

過敏症

発疹・発赤・蕁麻疹

■人参の副作用

過敏症

発疹・蕁麻疹

特に、甘草・麻黄・附子は副作用に注意すべき生薬です。

こういった副作用があるのを知っていただければと思います。

◆他の重大な副作用

間質性肺炎

肺の間質(肺の空気が入る部分である肺胞を除いた部分で、主に肺を支える役割を担っている)

を中心に炎症を来す疾患

炎症が進むと肺全体が硬くなり、死に至ることもある疾患です。

初期症状には、空咳・動作時の息切れ・発熱が発現します。

現時点で報告された漢方薬では、小柴胡湯・乙字湯・柴胡桂枝湯などがありますが

他の漢方薬でもその可能性はあるので、自身の体調は観察しましょう。

◆薬剤性肝障害

肝臓は薬剤の代謝に関与している重要な臓器です。

漢方薬によって肝機能障害が起こることがあります。

服用開始から数ヶ月程度で起こることが多く

AST・ALT・ALP・γ-GTPの上昇、発熱、発疹、全身倦怠感、悪心、嘔吐などの

自覚症状により発見されます。

こういった肝機能障害がみられる漢方薬には

乙字湯・黄連解毒糖・茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)・温清飲・加味逍遙散(カミショウヨウサン)

柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)などがあります。

高確率で副作用が出現することはありませんが、しっかりとこういった

知識を覚えておくことは自身の命を守ることにもつながります。

参考にしていただければと思います。

光幸はりきゅう院・接骨院 代表:庄司 有希