顔面神経とは脳神経の一種であり運動・知覚・副交感に関与する
顔面部を含めた、頭部において重要な脳神経である。

運動神経は表情筋・顎二腹筋(後腹)・茎突舌骨筋・広頚筋を支配し
その枝であるアブミ骨神経はアブミ骨筋(大きな音を聞くと収縮して
耳小骨の動きを抑え、音を伝わりにくくする働き)の支配もしています。
知覚神経に目をむけると、枝である鼓束神経が舌の前2/3の味覚を司る。
副交感は、涙腺・耳線・顎下腺をそれぞれ支配しています。
では、どういった疾患で顔面神経が障害され麻痺を起こすのか?をお話していきます。
◆顔面神経麻痺の分類
顔面神経麻痺は、ほとんどの場合片側性におきます。
そして、その障害された部位により中枢性か末梢性に分類されます。
1.中枢性顔面神経麻痺
中枢性顔面神経麻痺は脳血管障害に併発することがある。
この障害の場合は、おもに頬と下顎の表情筋に片側性の麻痺をきたすが
眼球を上方視させると額にシワを寄せることができる。
つまり前頭筋には麻痺がないので、前頭部の筋の運動は行えます。
2.末梢性顔面神経麻痺
原因がさまざまですので項目ごとに紹介していきます。
・特発性
原因不明であり、ベル麻痺とも呼称されます。
顔面神経麻痺の発症割合の60%以上を占めるほど、もっとも多い。
ベル麻痺は顔面に寒冷刺激が加わることで発症することもある。
年齢や性別、季節などを問わずに急性的に片側性に発症する。
なお発症の1~2日前に前駆症状として片側の耳介後部痛が出ることがある。
・脱髄性
両側性で同時に顔面神経麻痺を発症する、ギランバレー症候群があります。
この本症は自己免疫性の炎症性疾患であり細菌・ウイルス感染などを契機に起こります。
そのため前駆症状に、感冒様症状をあらわれ1~2週間後に急性発症しさまざまな
神経症状を呈しますが1ヶ月以内に極期をむかえ、その後3ヶ月~1年で
徐々にですが自然回復をします。
ギランバレー症候群のおもな神経症状は以下です。
- 弛緩性四肢麻痺により左右対称の脱力・筋力低下
- 両側性の顔面神経麻痺
- 嚥下・構音(言葉を正常にはっきり発音する能力が失われる)・呼吸障害
- 不整脈・血圧の変動・発汗異常などの自律神経失調障害
ギランバレー症候群は、基本的には重症化を避けるために即治療が必須。
血漿交感療法や免疫グロブリンの大量投与などを病院にて行う。
・感染性
帯状疱疹・単純ヘルペスの感染により起こる。
帯状疱疹による顔面神経麻痺では片側性の耳痛とともに耳介から外耳道にかけ
帯状疱疹と顔面神経麻痺をきたす。(ラムゼイハント症候群)
・続発性
外傷、中耳炎などの感染症、小脳橋角部腫瘍などに続発して起こる
・その他
糖尿病などの血管障害によっておこるものもある。
表情筋麻痺による症状
麻痺側の、後頭前頭筋・眼輪筋・口輪筋・頬筋・広頚筋などの全表情筋に
弛緩性麻痺を呈することになります。
麻痺側の表情筋は、トーヌス(緊張)を失うため笑うと顔が健側へ引っ張られる。

その他、表情筋の麻痺により上記症状が出現してしまいます。
また、ベル麻痺は味覚低下も起こしたり副交感神経線維支配の
顎下腺に異常をきたし麻痺側の唾液分泌障害がおきます。
涙腺にも影響がでるので、麻痺側では涙腺分泌障害も起こります。
アブミ骨神経のアブミ骨筋の機能障害も起こるので内耳に伝わる音波の大きさを
調節ができず聴力過敏の症状も生じてしまいます。
このような、症状を自身が感じたら病院を受診しMRIなどの診断を受けましょう。
治療は急性期では神経管内の浮腫を軽減させる目的でステロイドを使用します。
発症後7~10日以内に行うのが望ましいです。
また、絶対安静で角膜充血があれば眼帯や点眼薬も用います。
発症後10日以降は運動療法を行います。
- 鏡の前で閉眼運動
- 額にしわをよせる
- 口笛を吹く
- 口をへの字にする
- 頬をふくらませる
- パ行やマ行の発声練習をする
このあたりを、無理のない範囲で続けていきます。
また鍼灸治療により神経や筋の状態を緩和させるのも効果的です。
慢性化した場合は、運動療法を継続したりビタミンB複合剤を服用します。
予後は比較的良好で50~80%がほぼ完治するが後遺症や再発の可能性もあります。
なお、以下のような場合は回復の見込みが期待できます。
- 若年である
- 発症後より1週間以内に味覚障害の改善がある
- 症状のピーク時も不全麻痺の場合
- 麻痺の改善が発症後4~5日以内にみられる
以上が、顔面神経の麻痺に関係する疾患になります。
基本は病院での治療範囲が主ですが、発症から緩和方向へ近づくことで
鍼灸治療の対応することも可能です。
心身の状態を緩和、また表情筋や顔面神経に関係する経穴を用いて
諸症状の解消・改善を目的に行わせていただきます。
光幸はりきゅう院・接骨院 代表:庄司 有希