◆漢方の歴史

漢方とは中国の伝統的な医学が日本へ伝わり、日本の風土や文化を取り入れて

発展をとげた日本独自の医学のことをさします。

そのため、中国の伝統医学である中医学と漢方は別物と捉えます。

また東洋医学とは西洋医学に対比してつけた名称であり、現代では

漢方薬と鍼・灸などを含めた治療法と認識されています。

漢方の源流は、中国の春秋戦国時代(紀元前2世紀頃)に遡る話です。

その時代に、中国最古の医学書である「黄帝内経」が書かれ漢方の基礎理論となる

人体の生理や病理などを記載した「素問」

診断、治療、鍼灸などを記載した「霊枢」に分かれて記載されました。

後漢の時代(紀元前3世紀頃)に入り、「傷寒雑病論」とよばれる書物が書かれました。

これは、現代の漢方の聖書といえるもので「傷寒論」「金キ要略」の二書に分かれています。

「傷寒論」には急性病の過程と、各病期に用いる処方が書かれています。

「金キ要略」は慢性病について書かれた書物になります。

一方、漢方の製剤である生薬は後漢の時代に365種類の薬効について解説した

「神農本草経」という薬物の知識書が完成され、これが中国最古の薬物学書といわれています。

なお、神農本草経では薬効により上品(120種)中品(120種)下品(125種)に分類されます。

上品とは、命を養う薬であり毒性がないか、弱い毒性のため長期服用に問題がありません。

中品は性を養う薬であり、使い方次第で無毒と有毒のもがあり服用に注意が必要です。

下品は病期を治す薬であり、毒性が強いものが多く長期の服用ができません。

また、上品は上薬・中品は中薬・下品は下薬ともよばれます。

ここまで、ざっくりとした漢方の歴史を紹介しました。

では、なぜ今に至るまで漢方が注目されているのでしょう?

◆漢方が注目されるのか?

現代の医療の中心は西洋医学です。ですが近年では処方薬に漢方も必ずと

言ってもいいほど服用することが増えました。

西洋医学は、科学的な根拠のある性質を持っています。

病気になった場合は、その原因を探るため検査などの分析的な手段をつかい

治療は病期の原因または病巣部に局所化して行います。

一方、漢方は経験値を重視して「心身一如」すなわち心と身体を総合的に捉え

全体的なバランスを整えるという方法で病期に対処します。

また薬についても、西洋医学は合成薬物でその多くが単一の化学物質である場合が多く

漢方薬では、天然生薬を複数組み合わせた複合成分になります。

このような違いが、西洋医学と漢方には特徴があります。

西洋医学は、外傷治療や外科手術を必要とする治療には適していますが

「冷え症」や「疲れやすい」など病期として捉えにくいものや

「のぼせ」「イライラ」などの、不定愁訴に対して有効な治療法は確立されていません。

しかし、漢方では心身症や不定愁訴などの治療は範囲内であ

心身の両面の症状に対して改善効果が期待できるのです。

また高齢化に伴い慢性疾患をもつ患者が増えており

西洋薬による副作用の効果が懸念されています。

こうした問題に対して、体力がなく副作用が出やすい高齢者に対して

漢方を処方し副作用を軽減する目的で漢方薬を併用することは有効な方法と期待されます。

■漢方薬に用いる生薬とは

生薬とは、天然物をそのまま若しくは乾燥・粉砕・抽出などの加工を施したものです。

生薬の大半は、植物の茎・葉・枝・皮・根・種子などに由来しますが

中には動物由来のもの、鉱物由来のものもあります。

天然由来で、さまざまな成分を含んでいることから薬効が多岐にわたり

副作用が少ないなどのメリットがあります。

デメリットをあげるとすれば、気候や産地などによって成分の含有量に差が出るため

期待している効果が得られなくなるといったデメリットもあります。

●生薬の分類

五性による分類(熱・温・寒・涼・平)

生薬は性質に基づいて分類することができます。

身体を温める(熱・温)作用と、身体を冷やす(寒・涼)作用に分けられ

どちらにも属さない(平)を加えて五性(五気)の薬性分類をいいます。

身体を温める作用

熱:乾姜・呉茱萸・附子・山椒など

温:黄耆・杏仁・桂皮・生姜・川芎・当帰・人参など

寒:黄芩・黄連・柴胡・石膏・大黄など

涼:菊花・粳米・芍薬・薄荷・牡丹皮など

平:葛根・甘草・桔梗・猪苓・桃仁・茯苓など

生薬を、このように分類します。

●五味による分類

生薬は、口に含むと苦く感じたり辛く感じたりするなど独特な味を有します。

酸・苦・甘・辛・鹹(塩辛い)の五種に分類されます。

酸:五味子・山茱萸・酸棗仁など

  • 止瀉(下痢止め)、止汗、止血作用がある。
  • 肝、胆、目、筋の機能を補う

苦:黄連・大黄・蒼朮・柴胡・麻黄など

  • 熱を冷ます(清熱作用)、湿を乾かす作用がある
  • 心、小腸の機能を補う

甘:葛根・人参・甘草・杏仁・麦門冬・地黄など

  • 急迫症状の緩和作用がある、体力や気力を補う作用がある。
  • 脾、脾の機能を補う

辛:乾姜・生姜・桂皮・薄荷・陳皮・山椒・腑子など

  • 気や血の滞りを巡らせる作用、発散作用がある。
  • 肺、大腸、鼻、皮膚の機能を補う。

鹹:芒硝・牡蛎

  • 水分を調節し、硬い物を軟化する作用、乾きを潤す作用がある。
  • 腎、膀胱、耳、骨髄の機能を補う

これ以外にも分類があり

  • 気、血、水による分類(生命を保つ要素)
  • 補、瀉性による分類(補ったり、排出する効果)
  • 潤、燥性による分類(水分の保留、水分調整をする効果)
  • 升、降性による分類(作用が上、下に向く効果)
  • 散、収性による分類(作用が外、内へ向く効果)

などに、数多くの生薬は効果が分類されます。

いまの世の中、一般の方でも薬局などで漢方が買えるようになった時代です。

少しでも知識をもつことは、自分の身体を健康に保つには大切なスキルです。

今後のブログで各症例ごとにまとめて紹介していきます。

光幸はりきゅう院・接骨院 代表:庄司 有希