現代の漢方では、奇形や出産から以降までの悪影響の例はほとんど少なく
比較的安全であると言われていますが、慎重に選択することを忘れてはいけません。
今回は、そういった内容をまとめてみますので参考にしてください。
◆妊娠中の服用で注意したいこと
まずは、母胎の特徴を知る必要があります。
漢方の世界では、妊娠を「養胎優先」の考えが基本です。
妊娠中は、胎児の発育が優先されるので母胎には様々な症状があらわれます。
- 血の不足により、貧血・めまい・便秘・熱感を生じる
- 気滞症状により、頭痛や胸部のつまり感を生じる
- 水分の停滞により、神経過敏・不眠・嘔吐などを生じる
- 脾や胃、腎などの虚弱により腰痛・むくみ・耳鳴りなどを生じる
これらの症状妊娠時に、不特定に現れますが軽減や緩和のために
「安胎効果」が見込める生薬・漢方が必要になります。
特に、【当帰芍薬散】や【芎帰膠艾湯】などが安胎薬として用いられます。
また生薬では、人参・黄耆・香腑子・杜仲・白朮・黄芩・陳皮・木香など。
そのため、これらの生薬名を覚えておくと薬局で個人で購入するとき
参考にし役に立ててみてください。
◆妊娠中の合併症に漢方薬
■妊娠悪阻
つわりが重篤化した状態を指します。
身体を巡る気の巡りが阻害され、上腹部の水の滞りや胃虚により吐き気が起こります。
このときには、基本的に【小半夏加茯苓湯】が処方されます。
症状がより強い場合には【半夏厚朴湯】もよく用いられます。
半夏と生姜には、制吐作用があります。
■妊娠中に風邪
妊娠中は、水と血が不足している状態です。
そのため、従来の風邪を発症した際には汗をかくことで解熱を促すため
【麻黄】や【葛根湯】は適さないです。
水が不足している妊婦には【香蘇散】【桂枝湯】などを服用しましょう。
また咳や鼻水には【参蘇飲】を、乾いた咳には【麦門冬湯】などを用いましょう。
■妊娠中の貧血
基本的には、鉄分剤も服用しますが効果が不十分なことも多いので
水や血の補填目的に【当帰芍薬散】気と血の補填剤に【十全大補湯】を併用すると
貧血症状の改善に効果が期待できます。
■妊娠中の便秘
妊娠中は、水と血の枯渇により常習性便秘になりやすい傾向です。
本来便秘に対しては、大黄を含む漢方が用いることが多いのですが
大黄は流産・早産を招く可能性があり使用をしないのが鉄則です。
妊娠中は【桂枝加芍薬湯】や【小建中湯】などが適していると思います。
■切迫流産・早産
安胎薬である【当帰芍薬散】や【芎帰膠艾湯】(きゅうききょうがいとう)などが用いられます。
◆妊娠中の禁忌や慎重に服用する生薬
■禁忌
現在使用されている医療用漢方には、妊娠中の禁忌となる生薬は含まれていません。
しかし、安全性が確認されているわけではないので念のため妊婦の可能性がある人
妊婦への使用は慎重に指導や購入材料にするべきです。
慎重に用いるべき生薬には以下のものがあげられます。
- 大黄
- 芒硝(ボウショウ)
- 桃仁
- 牡丹皮
- 紅花
- 牛膝(ゴシツ)
- 蘇木
- 薏苡仁(ヨクイニン)
これら生薬は、流産・早産の危険が示唆されます。
したがって、これらの生薬が含まれている
- 【大黄牡丹皮湯】:ダイオウボタンピトウ
- 【調胃承気湯】:チョウイジョウキトウ
- 【大承気湯】:ダイジョウキトウ
- 【桃核承気湯】:トウカクジョウキトウ
- 【桂枝茯苓丸】:ケイシブクリョウガン
などは慎重に!
◆授乳中と漢方
授乳時の漢方薬に関しては、生薬の成分が乳汁へ浸透することから
新生児・乳児への影響を考慮しなければいけません。
特に注意する生薬は【大黄】【麻黄】です。
大黄の主要成分であるアントラキノン誘導体と、麻黄の主要成分である
エフェドリンが母乳に浸透すると新生児・乳幼児が下痢を引き起こすことがあります。
◆不妊治療と漢方
もちろん、生薬の効果と服用する漢方によっては良好な効果もあります。
不妊治療に用いられる漢方もあるので紹介してみます。
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
- 十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)
- 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
などが、不妊治療の効果が期待できます。
ですが不妊治療に大切なことは、自身の全身状態を良質にし
身体の健康・生命反応を向上させることがもっとも重要です。
ストレスの解消方法をはじめ、食事での栄養面、生活環境を整えましょう。
ここまでが、妊婦・授乳婦と漢方の内容をまとめたものになります。
参考になった方は、いかしてみて下さい。
光幸はりきゅう院・接骨院 庄司 有希【美容健康アドバイザー】