まずは、尺骨神経について少しお話していきます。

尺骨神経は、腕神経叢の内側神経束から起こり第7~8頚神経と

第1胸神経からの神経線維の枝です。

尺骨神経の走行は、上腕内側を下降し上腕内側上顆の神経溝である

肘部管を通り前腕前面の尺側に出てきます。

その後、さらに前腕尺側を下降しながら前腕遠位1/3で2本の知覚枝に分岐し

さらに下降して手根部の尺骨管(ギヨン管)を通過し手掌へ入ります。

この尺骨神経のスタート位置から通過する過程での障害が起きると

神経痛や麻痺を呈するのですが、どういったものが原因になるのでしょう?

◆尺骨神経麻痺の原因

尺骨神経の障害の原因の多くは、絞扼性であると考えられています。

特に、肘部管と尺骨管(ギヨン管)での絞扼性による障害である

肘部管症候群とギヨン管症候群という疾患があります。

他の後天的な要因として、頸椎の変性疾患により尺骨神経の神経障害も起こります。

また、小児期に転倒などにより上腕骨の外側上顆骨折の変形治癒によって

後遺症として外反肘が起こり、これに尺骨神経麻痺を合併することもあります。

これは、肘部管へのストレスを与える原因となる。

手関節背屈位での転倒や、野球のバッド・ゴルフのクラブなどのグリップを握る

スポーツでグリップに加わるインパクトにより生じる可能性がある

有鉤骨骨折が原因で、尺骨神経麻痺を合併することがあります。

この箇所には、ギヨン管の障害との関連性が示唆されます。

◆尺骨神経麻痺の症状

■運動麻痺

手の外在筋である尺側手根屈筋、中指~小指の深指屈筋が麻痺する。

内在筋では、小指球筋(小指外転筋・短小指屈筋・小指対立筋)をはじめ

母指内転筋・第3~4中様筋及び骨間筋群の麻痺障害を呈します。

その影響で、手の把持動作が障害されます。

また骨間筋麻痺により第2~5指の内転・外転運動も障害されます。

母指内転筋にも麻痺が起こるため、母指の内転運動にも障害が起こります。

この状態が長期すると、鷲手という変性を呈してしまう。

■知覚障害

前腕内側(尺側)から、手の尺側の掌側・背側と小指全体と薬指尺側の感覚低下をきたす。

なかでも尺骨神経の固有支配領域である小指全体に顕著にみられる。

◆尺骨神経麻痺の検査や診断

主に、徒手筋力テスト・知覚検査・腱反射・筋萎縮などの所見にもとづき診断される。

頸椎の変性なども疑う必要もあるので、頸椎の神経根検査

単純X線・筋電図検査・超音波検査やMRIなどを専門医療機関で行うことも重要です。

◆尺骨神経麻痺の治療

当院では障害を起こしている箇所の筋肉の状態を正常にもどし

神経の絞扼部位の除去や 、神経痛の緩和を目的とし手技療法や鍼灸治療を行います。

また骨・関節のアライメント不良・偏位した状態を修正するために

エクササイズや運動療法を行い、自家筋力を養い関節の安定性を獲得を狙ったり

鷲手による関節拘縮を予防するために、1日数回の手指などの運動も行い

尺骨神経麻痺の症状を緩和・改善へと導きます。

頸椎の変形を除去する場合は、基本外科的手術を行います。

また、ナックルベンダーなどの装具を用いることもあります。

肘部管症候群とギヨン管症候群については、別のブログでお話させていただきます。

こういった尺骨神経の症状が日々の生活に影響を与えている方

当院の治療で改善する可能性もありますので、お問い合わせ・ご予約いただければと思います。

光幸はりきゅう院・接骨院 代表:庄司 有希